2022年9月。
千葉県に住む学生が、自分の住む地域を舞台にした市民制作ご当地アニメに参加し、地元愛やアニメ制作の楽しさを知ってもらうというイベントが開催されました。
その名も「学生参加型ご当地アニメ制作プロジェクト」。
学生がデザインしたキャラクターに、学生がアフレコした声が入りアニメになるという、まさに「学生参加型」のイベントです。
今回は「声優体験」の様子をお送りします。
このイベント全体に関する解説や、キャラクターデザイン体験の様子はこちらから
今回の講師は能登有沙さん。

千葉県出身の能登さんは現在、声優だけでなく、ラジオDJ、振付師、モーションアクターなど、幅広く活躍されています。
自己紹介をした後はまず準備体操。

声優は声の仕事だと思っていたので「準備体操…?」と思いましたが、体全体を使って声を出すので、全身をほぐしておくことは大事なのだそうです。
確かに。
続いて、早速台本を見ていきます。

今回使用する台本はできる街プロジェクトが制作したご当地ゆるアニメ「超普通シリーズ」の「障害理解」編。

アニメはこちらからご覧いただけます!
https://www.youtube.com/watch?v=kC6ylafG2bE&list=PLjA4aVnZl7miBeRHHiLTm7fUChpz_b0jx
台本を読むにあたって、まずは原作のマンガを読みながらキャラクターの性格を勉強していきます。

参加者からは「無機質な性格ってどういう声を出していいかわからない」などの意見も。
キャラクターに声を当てるにあたって、そのキャラクターの性格を理解するのは非常に重要なことですね。
続いて、アニメの絵を見る前に台本のト書き、セリフを見ながら単語の意味や内容を理解していきます。

言葉の読みを確認したり、台本の誤字脱字の確認なども行ったりしていきます。
その後、いよいよ実際にアニメを見ながら声優の体験…はまだ行いません。
それぞれ役柄を決め、まずは音読をしていきます。

台本を読みながら、このキャラクターはどんな表情をするのかなどを考えていきます。
能登さんからは「学年などの設定で性格、雰囲気、声を考えるが、声を作る必要は無い。自分の声のままでキャラクター、性格などを表現すると良い」とのアドバイスが。
また、「上から話しているのか、下から見上げながら話しているのかなど、距離感を意識すること」というアドバイスもありました。
声の出し方で距離感も表現するというのはまさにプロの仕事ですね。
次に、立って映像を見ながら読んでいきます。

台本の持ち方などにも指導が入ります。
マイクに台本をめくる音が入らないよう、持ち方にも工夫があるのだそうです。

続いて実際のアニメに合わせて読んでいくのですが、これが意外と難しいのです。
キャラクターが映っていないところからセリフが始まるシーン(通称OFF)や、想像よりも映像が速かったりするなど、自分のセリフをどの部分から始め、どういった速度で読むのかを確認していきます。
OFFの部分が映像の何分何秒から始まるのかなどもメモしていきます。

セリフによって速さや表現の仕方が違うため、「ここは食い気味だよ!」など、能登さんが参加者に的確なアドバイスをしていました。
実際の映像に合わせて何度か練習した後は、いよいよマイクを使っていきます。

コロナ禍前などは実際の収録で、10人~20人がいてもマイクは4本、ということもあったのだそうです。
空いているマイクを探して入っていき、また下がるというのも声優さんの技術なのだそうです。

マイクの入り方や出方なども、相手が台本をどちらの手で持っているかや、出入りのタイミングなどを見ながら見極めていきます。

参加者はなかなかに苦戦。お互いの役やセリフを言う部分を見極めながら、適切なタイミングでマイクに入り、セリフを言うのは大変です。
7人でもてんやわんやでしたが、これを収録の現場では10人~20人でやっているというのですから驚きですね。
また、通常の収録はテスト⇒本番と行われますが、テストと本番で同じマイクに入らなければなりません。
参加者からは「場所を見て、映像も見て、台本を見て収録をしていくプロはすごい」という感想が。
能登さん曰く、「現場でもぶつかったりすることはあるよ」とのことでした。

今回もマイクに入るタイミングが合わなかったり、慌ててマイクを探したりして、みんなで試行錯誤。
思わず笑みがこぼれるシーンもたくさんありました。

また、体験を通して参加者同士がアドバイスを送り合う場面も。
今回の参加者は全員初対面とのことでしたが、体験を通してお互いの距離感が一気に近づいていたのが印象的でした。
声優にはチームワークも必要なのだな、と感じた次第です。
記事のため実際の収録時の音声や動画をお送り出来ないのが残念ですが、最初に台本の音読を始めた時とは別人のようにセリフを自分のものにしており、レベルの高さを感じました。
時間が過ぎるのは早いもので、あっという間に体験が終了。
参加者からは、「テレビで見ていたものを実際にやってみたら声優のすごさと楽しさを感じた」、「さらに声優に興味を持った」「今まで人前に出るのが苦手だったけど楽しかった」「声優になりたいと言っている友達がいるので、友達をさらに応援したくなった」などの感想がありました。

講師の能登さんからのメッセージ
私が声優を始めた頃に行ったワークショップやレッスンで講師の先生が仰っていたことも交え、自分の経験も踏まえて学生の皆さんにはお話させていただきました。
実際、私も声優を始めた頃はセリフを読むのも大変なのに(専門用語や説明台詞だとより一層…)動画を見て、キャラクターの動きや表情をみて、台本を見て、マイクが空いているところを見て…と「目が2つなのにやることが多すぎる!!」と呆然としていました(その間にもどんどん収録は進み…置いていかれるのです、、、)その中で毎回演技をするのですから声優というのは非常に専門的な仕事だなと今でも思います。
しかしその困難(?)を乗り越えて自分が声を吹き込んだキャラクターがテレビに映った時には、感動の一言では言い表せないなんとも不思議な高揚感に包まれるのです。
今回の声優体験を通じて参加された学生の皆さんにはぜひその気持ちを味わって頂いて、将来の夢へのパワーにしていただけたらと思います。
真面目な事をつらつらと書きましたが、個人的には学生の皆さんとマイクワークでバタバタしたり、お芝居を逆に学ばせてもらえたりしてとても楽しかったです!!ありがとうございました!
編集後記
声優という仕事はなんとなくイメージはできても、実際の収録でどのようなことをしているかというのは全く知りませんでした。
今回、体験を取材させていただいたことで、実際に声優の皆さんがどのような環境で、どのような工夫をして仕事をしているのかということを垣間見ることが出来たと思います。
また、参加者の皆さんが初対面ながら、一つの体験を共に行うことでチームワークができていったというのがとても印象的でした。
今回の体験は参加者の皆さんにとって、仕事を知ることや地域を知ることだけでなく、人と一緒に何かをすることの面白さを再確認する時間になったのかなと思います。
今回の記事では声優体験の模様をお送りしました。
次回は、実際にスタジオでアフレコ体験を行った模様をお送りします。
笑いあり、涙あり(?)のアフレコ体験の記事もお楽しみに!