2022年9月10日夜に、史上初?のオールナイト鉄道工事見学ツアーが松戸駅にて行われました。
今回のツアーを主催したのは松戸駅の改良工事をはじめ、首都圏を中心として様々な工事を管轄している東京建設プロジェクトマネジメントオフィス(東京建設PMO)。
普段は見ることが出来ない、夜間の鉄道工事の現場を公開する本イベントを、少しだけご紹介いたします。
オープニング

今回参加いただいたのは千葉県や関東周辺にお住まいの10名。
最初に、松戸駅のこれまでの歩みが紹介されました。
松戸駅は1896年に開業。
その後、沿線をはじめとする地域の発展とともに、電化、複々線化、橋上駅舎化などに伴う変化があり、1977年に概ね今の姿になりました。

現在行っている松戸駅改良工事は2020年に着手。
上野方(南側)に人工地盤を構築して、松戸駅を大きくします。
また、ラチ外(改札外)コンコース通路の拡幅に加えて、複雑な改札配置をわかりやすくすることで、ご利用しやすく、さらに愛される松戸駅を目指して工事が進められています。

鉄道での夜間工事の特徴の一つに、「作業時間の短さ」があります。
最終列車が出発した後に『線路閉鎖(列車がその区間に入らないようにする措置)』と『き電停止(架線に流れている電気を止めること)』を行ってから作業開始。
そして始発電車が来る前には電車が走ることのできる状態に戻すということで、非常に限られた時間の中で工事が進められています。
さらに松戸駅は松戸車両センターという常磐線の車庫が近くにあることから最終電車が遅く、始発電車が早いため、1日の作業時間はわずか90分程度となっています。

前置きが少し長くなりましたが、早速当日の様子をご覧いただきましょう。
Aヤード~屋上

一行はまず西口のAヤードと呼ばれる場所を見学。
この場所にはタワークレーンが設置されており、工事に必要な杭の施工機械や鉄筋カゴなどをここから現場に搬入していきます。
写真右側に写っているのは人工地盤の柱を設置するために、土砂を掘削するための機械です。
ちなみに松戸駅の現場では、駅のホームや建物内といった作業空間が制約された箇所でも連続施工を可能とするために開発された「JET-18工法」を採用しているそうです。
JET-18工法の詳細はこちら。

その後は屋上へ。
工事の現状を上から眺めていただくとともに、実際にタワークレーンが動く姿をご覧いただきました。
それがこちら。

タワークレーンが杭を掘削するための刃を持ち上げ、工事箇所に運んでいきます。
運転席の高さ30m、ジブ(クレーンの腕の部分)の長さ46mのタワークレーンがキビキビと作業をしていく姿は壮観です。
軌陸車見学&乗車体験
タワークレーンを見学した後は場所を移動し、軌陸車(線路と道路両方を走ることのできる車両)の見学、体験を行いました。

お客さまが実際に営業している線路内に入るということはなかなかないのでしょうか。
工事関係者と同じく、指差喚呼を行い、線路内に入っていきます。
まずは軌陸車の載線(鉄輪を出し、線路を走行できるモードに切り替えること)を見学します。


この距離で軌陸車の作業風景を見ることができるのはなかなか無いのでは、と思います。
続いて、軌陸車に乗車し記念撮影。

助手席から、軌陸車の乗り心地や風景をお楽しみいただきました。
余談ですが、軌陸車の体験箇所からの風景はこんな感じです。

見学が終わった後は持ち物の確認を行います。
線路内に持ち込むものを事前にチェックし、それらを失くしていないかスタッフと相互に確認。
翌日、列車が安全に走行できるよう、線路内にものを置き去りにしていないことを念入りに確かめます。

ホーム上工事見学
続いてはホーム上で行われている工事を見学。

ホームに向かうにあたって、停止している改札機を通過していきます。
きっぷもSuicaも持たずに改札機を通過していくというのは、非常に違和感がありますね。
(鉄道をご利用の際は、目的地まで正しい乗車券類をご利用ください)
ホーム上では、仮囲いの中の工事を見ていきます。
完成した杭がこちら。

杭の直径は約3m、深さは約25m。
工事は、地盤の関係上、ホームから5mの深さまでは人力で掘削、その先は機械で掘削を行っているとのこと。
また、松戸駅のホームには、過去の跨線橋の基礎やホームの舗装などが地中に残っていて、それを取り除きながらの掘削工事だったそうです。
今後、この杭の上に新しい松戸駅の柱が建てられていきます。

この時点で概ね3時頃でしたが、工事はすでに初電の運行に向けて片付けと安全確認が行われていました。
鉄道工事はお客さまが普段利用する場所でも行われることから、工事を途中で終わらせることができず、必ず電車やお客さまが利用できるように復旧することが必要になります。
そのため、街中の工事であれば1日で終了する内容を分割して計画を練っているとのこと。
非常に限られた時間の中で工事が行われているということを実感させられます。
そしてホーム上見学ツアーの最後はこちら。

工事では、建物上棟時に安全祈願で柱や梁に名入れをする文化があるのだそうです。
工事にかかわった人や、その後その建物を使う人の名前などをサインします。
それにならって、今回は将来の松戸駅を支える柱に名入れとコメントをしていただきました。


皆さま、熱いメッセージをありがとうございました!
展示内容見学
今回のツアーでは、安全に関わる装置、グッズや、松戸駅のこれまでの歴史に関する写真などを展示しました。

こちらはATOS端末に関する説明。
ATOS端末とは、線路閉鎖の開始、終了の手続きや競合する作業などの情報を手元で管理できるモバイル端末で、列車運行と工事の安全を守っています。

実際に操作方法などもご覧いただきました。

こちらは松戸駅の過去の写真展示。
地平駅舎から橋上駅舎へ、そして西口駅ビルの誕生と当時のにぎわいの様子など、松戸駅のこれまでの歩みをご覧いただきました。
エンディング
最後に、将来の松戸駅のデザイン計画を紹介。
お客さまへの紹介としては、このツアーが初公開となりました。
川の渡し場でもあり、更級日記にて「まつさとの渡」として登場し、古くから人々の行き交う場所として発展してきた松戸駅。
それにふさわしい、人々の集いの場となる「新しい“まつさと”の駅」の完成予想図が公開されました。
少しだけご紹介いたします。


いかがでしたでしょうか。
鉄道工事は、お客さまや列車の安全・安心を最優先に、主に終電から初電の間の非常に限られた時間を中心として作業を進めています。
多くの工事関係者が、夜間の駅構内で、新しい駅を提供できるよう、一歩ずつ工事を進めています。
2027年春の新しい松戸駅の開業に向け、これからも多くの工事が進められていきます。
皆さまも、新しい松戸駅の姿にご期待いただきながら、工事へのご理解とご協力をお願いいたします!
ツアー担当者からのメッセージ
東京建設PMO初主催となるオールナイト鉄道工事見学ツアーに参加いただきましてありがとうございました!
夜間の鉄道工事は、限られた時間で工事を行うために多くの技術や工夫が溢れています。
普段、駅をご利用いただいているお客さまや地域の皆さまにも是非体験・感動していただければと思い、このようなツアーを企画・開催いたしました。
初めての見学ツアー開催にあたり、松戸駅社員の皆さま、施工会社のフジタ松戸駅改良工事作業所の皆さまに色々と準備いただき、ありがとうございました。
JR東日本には、建設工事を担当している社員がおり、工事を行っている施工会社の皆さまと協力しながら、駅や鉄道施設の工事計画や監督の仕事をしています。
私たちは、お客さまや地域の皆さまへ、将来の鉄道・駅・まちを創造し、心豊かなくらしに貢献できるよう取り組んでいます。
松戸駅改良工事は、コロナの足音が聞こえた2020年春に着手し、2027年春の完成にむけて約7年間の工事を進めていきます。
これからの松戸駅の変化をみて、感じていただきながら、新しくなる松戸駅にご期待ください!


イベントを企画した東京建設PMO若手メンバー。右から花輪さん、鶴川さん、吉川さん、松村さん