唐突ですが、みなさんにもお気に入りの銭湯はありますか。
私はちょっと体が重いなと思った時には、上野駅からほど近い寿湯に行くことがあります。ゆったりとした露天風呂と水風呂に交互につかり、ぼーっとしていると、「ま、いっか」、「なるようにしかならんしな」と私のちっぽけな悩みは大抵どうでもよくなり、不思議と活力が湧いてきます。
そんな私の悩みを吹き飛ばしてくれる銭湯も1970年前後には東京都内に約2600軒あったのですが、この50年少しで約460軒にまで減ってしまいました。
しかし、ネットを検索すると銭湯の歴史や楽しみ方、入浴の作法等、法人、個人が銭湯に関わるさまざまな情報発信がなされており、改めて銭湯の価値が見直されていることが見てとれます。掘れば掘るほど深い銭湯の世界。日本銭湯文化協会 銭湯検定 (sento.or.jp)なんていう資格も見つけました。
また、東京銭湯ウェブサイトにて「銭湯の担い手養成講座」を行っていることも発見しました。「銭湯の担い手養成講座」というストレートな響きに興味を惹かれ、東京都浴場組合さんにインタビューを行いました。
「『銭湯の担い手養成講座』とは、将来銭湯で働きたい、銭湯を担いたいと考えている方のために、実際の銭湯の現場の仕事を学ぶことが出来る講座です。銭湯の仕事って番台に座っているだけだと思ったら大間違いで、むしろ営業終了後からが本当の仕事です。」
そう答えてくれたのは東京都浴場組合の常務理事であり、ご自身も「立川湯屋敷 梅の湯」、「府中湯楽館 桜湯」を経営する佐伯雅斗さんです。
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―担い手講座を受講したいという応募者はどれくらいいるのでしょうか。
佐伯さん「昨今のサウナブーム、銭湯ブームもあって、銭湯に携わりたい、銭湯で働きたいという人は若者を中心に増えているんです。この講座にも24人程度の募集に対し、約100人の応募がありました。ただステージ1から3まであり、修了するのはごくわずかの人ですが、実際に講座を修了した方が銭湯に就職した例もあります。」
―受け入れるにも非常に労力がかかると思いますが、とてもいい仕組みだと思いました。
佐伯さん「銭湯を運営したいという人は増えましたが、銭湯の業務についてイメージできていない人も多いのも事実です。でこの講座を通し、銭湯経営者と銭湯に携わりたい人のマッチングを行っています。講座を修了しているとなれば、銭湯経営者の方も安心しますしね。」
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―水光熱費も非常に高くなり、運営自体も厳しいのではないでしょうか。
佐伯さん「燃料費の高騰は直接的に経営に響いてきます。ただ燃料費もそうなのですが、銭湯を運営していくうえで大きなネックになるのが設備投資です。銭湯の設備は約20年毎に改修が必要となります。さらに老朽化した銭湯自体も建て替えるとなると、5億円、10憶円もかかってしまうような場合もあります。」
―行政からの補助金があったりしないのでしょうか。
佐伯さん「もちろん補助金もあるのですが、投資額が億単位ですので微々たるものです。みなさんも知っている有名で安定的な経営が出来ている銭湯というのは、ごく一部なんです。実際には施設も古く、難しい立地で家族だけで営業している小さな銭湯が数多くあります。経営者の方も高齢の方が多いので、設備投資に億単位の金額をかけて運営していくというのは現実的ではなく、残念ながら自主廃業される方も多くいます。」
―それだけの大変さがありながら関わる方々のモチベーションの源泉はどこにあるのでしょうか。
佐伯さん「やはり、銭湯が子供のころから身近にあって、その銭湯をなくしたくないという思いが一番強いです。やりがいもありますが、長時間の労働になるのも事実ですので、銭湯が好きでライフワークとして考えられる人ではないと難しいかもしれません。」
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最終的に「銭湯の担い手養成講座」ステージ3を修了した受講生の方の情報は、東京都の銭湯経営者だけが閲覧できる「担い手情報サイト」に登録されます。このサイトを通じて銭湯経営者と銭湯で働きたい人のマッチングを行い、実際に修了生で銭湯に就職した人も出てきているそうです。
「銭湯の担い手養成講座」の特設サイト https://www.1010.or.jp/ninaite/
※今後の「銭湯の担い手養成講座」は、詳細が決まり次第、ホームページ等で告知します。
あっという間にインタビュー時間が過ぎさってしまったのですが、「銭湯って、もはや人々のセーフティーネットであり、インフラなのでは??」と考えました。
そう思うと同じインフラ企業である鉄道会社社員としてはがぜん銭湯に親近感や愛着が生まれてきます。(余談ですが、最近佐伯さんは移動に中央線を利用していただいているようで、その便利さをおほめいただきました。)
みなさんも、まずは職場近くの銭湯を探してみることからはじめてみてはいかがでしょうか。
東京都浴場組合ウェブサイト 東京銭湯 TOKYO SENTO