324円のしあわせ。Zopf(ツオップ)カレーパン専門店グランスタ東京店

おいしいカレー以上のカレーパン。もはやカレーなのかもしれません。

遡ること約15年前、当時は現在のパンブームといった状況にはなく、ガイドブックもまだ少なかった頃、私の教科書は「パン屋さんが好き!(著者Cleva・出版社マーブルトロン)」。お店を紹介するだけでなく、美しい陳列の写真が並び、店主の哲学にも触れることが出来るこの本を、毎日のように眺めていました。

その頃の私は、とある商業施設のパン担当をしており、教科書片手にパン屋をまわっていました。仕事が早番の日は夕方前に中抜けし、遅くまでやっている百貨店のパン屋を視察、遅番の日は出勤前に、夕方に閉まってしまうまちなかのパン屋に行くなど、ほぼ毎日パン屋とともに生活を送っていました。

最初はアクセスのよい都内の店を中心にまわり、あらかた都内の有名店を訪問し終え、いよいよ郊外店へ行こうと考えた際に、真っ先に浮かんだのが、そうZopfです。Zopfに行こう、さらに言うと、Zopfのカレーパンを食べに行こう。Zopfはパン好きなら知らない人はいないといっても過言ではない、千葉県の名店。あの比較サイトでも常に上位に入る人気店。しかもその多くの商品も200円台と、300円、400円が当たり前になってきた時代にあって、価格は抑えめ。セルフスタイルで100種類前後のパンが並び、焼き立てが次々と出てくる、パン好きの楽園であり、その看板商品のひとつがカレーパンです。1日約800個という個数がその人気を物語ります。

そんなZopfを後回しにしてしまったのは、JR常磐線各駅の北小金駅が最寄り駅で、駅からもそれなりに離れているということ。当時私は埼玉県の大宮に住んでおり、往復で3時間以上をかかる計算になります。
それでも避けては通れぬと、大宮駅から高崎線、上野駅にて常磐線快速に乗り、松戸駅にて常磐線各駅と、2回の乗換えを経て、ついに北小金駅へ到着。バスで行けば約10分のところ、はやる気持ちを抑え、私は歩いていくことにしました。
はじめて降り立った北小金駅。当時はスマホもなく、ロータリーのバス停で次のバスの時間を調べるも、カレーパンを食べに行くだけに、空腹というスパイスを加えるんだと、最寄駅の北小金駅から歩いていくことに。徒歩30分。不安になるほど閑静な住宅街を抜け、ガイドブックで何度も見たあの外観、ステンドグラスが施されたドア。壁面の緑。と、ここまで語らせていただきましたが、店内やその商品については省略させてもらいます。ぜひ自分の五感で確かめてください。

帰りのバス、一番後ろの席を陣取り、誰も見ていないことを確認してカレーパンを思いっきりほおばった時の脳内に広がったあの音。たぶん忘れることはないと思います。

時間帯を選べば、ほとんど並ばず買えることも。


そして約2年前の2019年、グランスタ東京にZopfのカレーパン業態が出来たと聞き、すぐ来店しました。当時、往復3時間かけてたどり着いたカレーパンが数分並んだだけで、手元に届いた時のあっけなさ。グランスタ東京内スクエアゼロ近くの椅子に座り、あつあつのカレーパンをほお張ると、脳内にあの音が広がりました。人気の行列店に行って、小説を読みながら並ぶ時間も嫌いではないけれど、ふらっと行って数分後に手に入る幸せ。しかも324円。小さな幸せを感じたい方はぜひ東京駅までお越しください。

DATA

●Zopfカレー専門店 グランスタ東京店
【場所】東京駅 グランスタ東京地下1階(北口改札内)
【営業時間】8:00~22:00(日・連休最終日の祝日は21:00閉店)
※新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、現在の営業時間と異なる場合があります

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