奥手賀ツーリズムをはじめ、柏から働き方、暮らし方の発信を行う、EDGE HAUS代表の油原さんにインタビューを行いました

千葉県柏市でコミュニティづくりの事業を行っている合同会社EDGE HAUS(エッジハウス)代表の油原祐貴(ゆはら ゆうき)さんにお話しを伺いました。EDGE HAUSでは、現在コワーキングスペース、ランニングステーション&スポーツカフェ、マイクロツーリズムの事業を行っていて、今年創業10年を迎えます。

油原祐貴(ゆはら ゆうき)
1979年茨城県龍ヶ崎市生まれ。株式会社リクルートにてホットペッパー柏編集部の創刊等に携わる。2011年、EDGE HAUSを立ち上げ、柏から働き方、暮らし方の発信、提案を行っている。


―最初にEDGE HAUSを立ち上げた際のお話を聞いてもよいでしょうか。
油原さん 「大学卒業後、リクルートに入社し、柏編集部にて勤務していました。リクルートではビジネスをつくることを学び、非常に良い経験が出来ましたが、その後、商業施設の環境デザイン等を提案する会社に転職し、東京勤務となりました。満員電車に揺られ、数字に追われながら、日々を過ごす中で、東京という大都市に大きな工場に働きに出るような感覚に違和感を覚えていました。そのような日々を中で、2011年3月11日の東日本大震災が発生し、働くことを改めて考えるきっかけとなりました。マスを相手にするのではなく、限定的なエリアに深く入り込み、自分とそのエリアとをリンクさせ、経済アクションにつなげていく、そのサイクルを回したいと思いました。それがEDGE HAUSを立ち上げた背景です。

まず、さまざまな分野で活躍する人が集う場となる「YOL Café Frosch(ヨルカフェフロッシュ)」と職住近接の「地域につながる働き方、暮らし方」を提案するコワーキングスペースの「Noblesse Oblige(ノブレスオブリージュ)」をオープンさせました。当時は人と人が集まれるカフェやコワーキングスペースは柏にはほとんどありませんでした。」

「Noblesse Oblige」の風景。時間単位の利用も可能。

―コミュニティづくりを事業とされている中で、柏はどのようなエリアだと感じていますか。
油原さん
 「柏市の人口は約40万人と、地域経済として一定のボリュームがあり、柏エリア内でビジネスが成立します。足もとの経済がしっかりしているので、お金をかけて、わざわざ遠くからお客さまを呼ばなくとも、経済が回り、持続可能性があります。
また、柏は全国で初めて駅前のダブルデッキや商店街のアーケードが出来たまちであり、新しい考えを取り入れる柔軟さもあると思います。また、エレベーターと廊下に例えてよく話をするのですが、各フロア(各世代)に自由に相談にいけるエレベーターがあり、そこから横展開するための廊下も整っているのが柏の特徴でもあり、多くの人を巻き込みながらプロジェクトを進めることが出来ます。

創業の地として柏を選んだのは人との縁ですが、もともと学生時代から遊ぶといえば柏であり、ちょうどその頃、ウラカシと呼ばれるエリアには魅力的な人々やカルチャーが集まっていました。いまもエリアをまたぐ新しいスタイルの商店会『ウラカシ百年会』が中心となり街を盛り上げる活動しています。」

―コミュニティづくり事業にとって、新型コロナウイルスはどのような影響があったのでしょうか。
油原さん
 「昨年4月に最初の緊急事態宣言が出た時は、完全在宅勤務がベースとなり、一時的にNoblesse Obligeの利用者も減りましたが、その後徐々に戻ってきました。やはりある程度在宅勤務が続くと、コミュニケ―ションを図りたくなったり、住宅事情により、自宅が長時間仕事をする環境として適していないこともあるのだと思います。

また、YOLCafeFroschについては新型コロナウイルス発生後に閉店することになりましたが、実はもともと閉店を考えていました。Froschを開いた2011年当時、まだまだ人とつながれる場所が少なかったのですが、その後誰もがTwitterを使って自由に発信し、Facebookを使って人がつながることが当たり前になってきました。そのため、Froschが人と人をつなぐ場という意味では一定の役割を終えたため、Froschを閉店することとしました。」

人と人をつないできたYOL Café Frosch。2020年4月に閉店。

―新たな取り組みとして、奥手賀エリアの自然を楽しむ奥手賀ツーリズム事業にも携わっていますが、奥手賀沼の可能性について聞かせてもらえますか。
油原さん
 「元沼南町職員の方に聞いた話なのですが、当時その方の上司の部長さんが『今は、手賀沼は何もしなくてよい』と発言をしていたようで、その発言の真意は、『何もしなくてもそのうち手賀沼の魅力に多くの人々が気づくから、無理な開発をしなくていい』ということで、工場誘致や商業開発が行われなかったことにより豊かな自然が残されています。何周か回って今の時代にフィットしていると思っています。

手賀沼は富士山のような、全国から人が集まるようなA級の自然ではありませんが、自転車で自宅から通えるところに自然があることは非常に豊かだと思います。実際にはわざわざ都心から来ていただける方もいますが、日常的に自然を楽しむライフスタイルの提案をしていきたいと考えています。」

奥手賀ツーリズムの一環で運営するCAMP・BBQガーデンKingfisher Garden(キングフィッシャーガーデン)

―様々な事業を通じて得た知見をもとに、他のエリアに携わるということは考えてらっしゃらないということでしょうか。
油原さん
 「自分達が地縁のないエリアに携わることは考えていません。コンサルティング事業として地域と携わるという道もあるかもしれませんが、それは自分達がやる必要はないと思っています。その地域に愛がある人がやるべきだし、そもそもその地域に対し、責任が取れません。また、顔が見えることを大切にし、責任を取れる範囲で事業を行っていきたいと考えています。

JRの方を前に言うのもなんですが笑、世の中、特に駅が便利になりすぎているとも感じています。便利であることはよいことですが、すべてエキナカで完結してしまいます。まちとのつながりという点で、『Noblesse Oblige』は駅のすぐ近くではなく、少し離れた場所を選びました。お客さまにはまちに出てもらって、まちとのつながりを持ってもらいたい。今後も、地元柏の資源を活かし、顔の見えるコミュニティの中でビジネスを起こし、地域経済を回していきたいと考えています。」


さまざまな相談が油原さんに舞い込んでくるようで、最近ではバイオマスの案件についての話があった際、知人のブリュワリーから出る麦粕を使用出来ないかと考え、両者をつないだりもしているとのこと。実際、このインタビューを終えた際、自然な流れで柏カレー図鑑の編集長でデザイナーの波木さんを紹介いただき、まさにこれこそ、油原さんがいうおせっかいなのだと感じました。

余談にはなりますが、JR東日本の駅で最初に自動改札機を導入したのは実は柏駅です。偶然かもしれませんが、柏は新たな挑戦をするエリアなのかもしれません。


合同会社EDGE HAUS(エッジハウス)
https://www.edgehaus.jp/

Okutega Tourism(オクテガツーリズム)
https://www.okutega-tourism.jp/index.html

Noblesse Oblige(ノブレスオブリージュ)
http://nbob.jp/

Bunny Burrow(バニーバロウ)
https://kakedashi.jp/shop/bunny-burrow/

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